恐ろしいバンドソーの話

はじめてバンドソーが怖いと思いました。今まで何の恐怖心もなく、木球の切断というかなり危険な作業をやってのけていた自分がちょっと信じられません。危険な作業であることは分かっていたのですが、怖いと思った事はなかったのです。というより、「怖い」と思ってしまったら最後だという事を知っているから、怖くはなかったのかも知れません。だって、怖くてバンドソーが使えなくなる事のほうがよっぽど怖いし・・・。
今日は、クォーターの制作の為、木球の切断をしていたんです。ちびのクォーターは半球を半分に割るだけなのですが、親クォーターは球の状態から4分の1まで切断しないといけないんです。すなわち、一度、半球にしてからもう半分に切るんです。と書いているだけで結構イヤな感じです。あんまり考えたくない場面です(笑) 今使っているバンドソーは、(正確に言うと、アトリエの大家さんに借りているバンドソーなんですが)ノコ刃の幅が6~7cmぐらいあって歯も粗いので、見るからに危険マシンです。帯ノコってのは昔から「危なそうだ!」とは思っていたのですが、いつのまにか「大丈夫!」に変わっていました。ナゼだろう・・・。
球体の一部を削って平らを出し、”危険マシン帯ノコ”で半球にしていました。今までは出来ていました。それなのに、今回はたてづづけに3つ失敗し、ちょっと気合を入れなおしてまた作業を続けていたのですが、さらにもう一度失敗してしまったので、それ以上その作業を続けるのは止めました。失敗するとどうなるのでしょう。変な風に切れてしまうなんて、そんなモノは失敗とは言いません。arumitoyに限って言えば、それは「味」として容認されるものです(笑) バンドソーVS球に於いて失敗とは、下手すると体の一部が欠如します。少なくとも球が飛びます。高速回転しているものは侮ってはいけません。
今回をもって、球体を切断するのは止める事にしました。あるみ氏にはもうできません。これからはちびクォーターの様に半球から作ることにしました。木目が全部揃っているのが好きだったんですが、指がなくなる心配がない方が好きかな(笑)
この作業は実は、ドイツにいる間からずっと懸念されていた事で、ノベルトの心配の種でもありました。いく通りもの試行錯誤を重ね、こういうやり方に至っていたのですが、圧倒的な違いはノコ刃の幅でした。ノベルトのところで使っていたバンドソーの刃幅はせいぜい1~2cmで、さほど危険なマシンではないのでした。ちなみにそこでの危険マシンは昇降盤です。当初はこれで木球の切断をしようとしたこともあったのですが、ボスストップがかかり、禁止になりました。絶対にやるな!と言われました。これからずっと作り続けていたいのなら、安全な方法以外は絶対にやっちゃダメだと言い聞かされました。ちょっとでも危険を感じるのなら、やるべきではないと。100回でも10000回でも成功したとしても、たった一度上手くいかなかっただけですべてが終わってしまうんだから。この言葉がずっとアタマの中を回っています。あぁ、ノベルト、ごめんなさい。
今日まで事故なくこられたのは、奇跡のような気がしてきました。なんて危ない橋を渡っていたのだろう。今度ドイツに行っても、ノベルトにこの話はすまい(笑) いつもマシンに向かう時は、最初、一呼吸おいてマシンを征すぐらいの意気で向かい合います。そうしないと、マシンにやられてしまうのです。とは言いながら、作業中は絶好の「思考時間」なので考え事は必ずといっていいほどしています。目と手は別々に動くからですが、頭があまりにも思考の方へ行ってしまうと手元で何かが起こっています。ほかの事を考えすぎて、「目」がサボっている時はよくモノを飛ばしています。サンダーの流れと共に流してしまったり、ドリルの刃と一緒に回転させてしまったりと。危険レベルに合わせた警戒網しか張っていないと言いますかなんと言うか。それでも、バンドソーVS球の時はかなりの緊張をもって挑んでいたのですが、もうイヤです。(ちなみにこの場合は、考え事なんてもってのほかです)
という訳で、あるみ氏はちょっっぴりバンドソーを警戒しています。ほんのしばらくの間だけ。もう二度と球体をバンドソーの元へは持っていくようなことはしないでしょう。
(update 2005.05.31)